◎あらすじ◎
「刀屋」は、男と女の悲恋と誤解を描いた落語です。
物語は、徳三郎が心の中で悩み、最終的に自分を追い詰めて死ぬ決意をするところから始まります。彼は、以前交際していたおせつに裏切られたと感じ、彼女を殺し自分も死ぬつもりで日本橋の刀屋へ向かいます。刀屋では、徳三郎が「なるたけ斬れる刀をください」と言って、斬ることに対する強い意志を見せますが、刀屋の店主はすぐに彼の心情に気づき、親身になって彼を諭します。
店主は、徳三郎にただ死ぬだけでなく、男らしく仕返しをする方法を教えます。それは、死ぬことではなく、立派な身代を作り、元彼女の店の前を堂々と通り過ぎて見せつけることだと言うのです。店主のアドバイスを受けて、徳三郎は考え直し、暴力ではなく、男らしいやり返しをする方法を模索します。
ところが、徳三郎が店を出て街を歩いていると、「迷子やーい、迷子やーい」という声が聞こえてきます。実はそれはおせつが家を飛び出し、徳三郎を探しに来ているという知らせでした。徳三郎はそのまま駆け出し、おせつを見つけて抱き合います。しかし、追っ手が迫ってきており、二人は逃げることに。二人は、命を共にする覚悟で命を絶とうと決意し、木場の橋から飛び込むことを決めます。
だが、運命は二人を救いました。橋の下は筏が浮かんでおり、二人は命を取り留めます。徳三郎は驚き、「なぜ死ねないんだろう?」と戸惑い、おせつは「お材木(お題目)で助かった」と答えます。結局、二人は死ぬことなく、再び生きる希望を持って前に進み始めるのでした。
この話は、誤解と心の葛藤、そして運命の奇跡的な展開を描きながら、ユーモアと共に感動的な結末を迎える落語です。
◎演目視聴◎
三代目古今亭志ん朝(1938-2001)
『刀屋』(34分04秒)
